覚醒前
「見よう見まねで結構ですので、一緒にやっていきましょう。」 CDラジカセからは、倍音の多い、俗に言うヒーリングミュージックというのか、ゆったりとした輪郭のボケた、高くもなく低くもない音で構成された癒し系のスローミュージックが流れている。 これ…
「エネルギーが弱っているね」 とサンバサンバのオーナーに言われた言葉がずっと引っかかったまま 1ヶ月が経とうとしている。 はっきりしたことは、 どうやら私が最近感じ始めた変な感覚の正体は気で でも私に足りないのも気で それが原因で自律神経がやら…
「あぁ、気にしなくていいよ。この席に座る人の3人に1人はそうなるんだ。」 と言って、オーナーは席の直ぐ近くの棚からティッシュ箱を手に取り、 涙でグジュグジュになった私の前にそれを置いた。 手慣れたもんだな・・・。 女神様の席に座って涙を流して…
「ここには3人の神様がいるみたいなんだよ」 店内奥の小さなテーブルを囲うように椅子が並んだ二名席に腰掛けた途端、カラス君は言った。 30席ほどある店内は薄暗く、クラシックギターのゆったりとした音楽と、南国風の音楽がランダムに流れた。他の客は2…
「あー、今日も気の巡りが悪い〜。」 これは最近の、顔色の悪い私の口癖。 その日も、隣で私のぼやきを聞いていてくれたのはカラス君。 カラス君は同い年の友達で、色黒、青光りするくらいのサラサラ黒髪。 決して悪くはないビジュアルなのに、見た目にはコ…
ピンクちゃんはこの日も、 植物について熱く語っていた。 私にはピンクちゃんというお友達がいる。 彼女は会社の元同期で、私より5つ年上。 目鼻立ちがはっきりとした美人さんで、清潔感もあり、スカートがよく似合う。 身の回り品は全てピンク色。それが嫌…