2015年3月14日 ピンクちゃん、半覚醒。
『おーきりんちゃん!いたいたぁー。』
1ヶ月ぶりに会ったピンクちゃんは、ちょっと様子が違っていた。
この日は私がどうしても行きたかったミュージックフェス開催日。
一緒に行く予定だった人がダメになり、あまりライブに興味がなさそうだけどピンクちゃんの近況も知りたくてお誘いした。
ピンクちゃんとは同じ職場を辞めてから月1ペースで会っていて、だいたい2〜3時間くらい話せばネタは尽きそうなものを、ピンクちゃんとはだいたい9時間くらいぶっ通しで話せるくらい尽きることはなかった。
そして、ここ最近のお互いの悩みのテーマは「愛」だった。
単純な恋話も少しはあったけど、それだけでなく人類愛というか、博愛というか、そういう広義の方の「愛」。
結局「愛」とは?と言われても私は答えが見つからず、今まで一度も考えたこともない「愛」についての本を片っぱしから読んでいた。そして、愛について気づいたことをピンクちゃんにシェアをしていた。
この時読んでいたのは、『アミ小さな宇宙人』。3部作の小説はあっという間に読んでしまった。
愛って、もしかして「気」となにか関係あるんじゃないかって思い始めていたところだった。
今日、駅で待ち合わせたピンクちゃんと目は合うものの、なにか見ているものが違う感じ。
ただでさえ大きい目が、さらに見開いている。
なんだが私のことというか、私の方向をじっと見て、観察してるように見える。
いったい何だ。顔になにか着いてるわけじゃなさそうな。
一応自分の後ろを確認しつつも聞いてみる。
『あの、ピンクちゃん・・・ど、どうしたの?』
『いや・・・あのね、最近変なものが見えるようになってね。私会社にいた時からたまーに霊とか見えちゃったりしてたじゃない?それがもっと増えたっていうか・・・。』
と、いいつつ、ピンクちゃんは私の方をまじまじと見る。
『えーー・・・っと、ちょっと待って。
それ私に憑いてるってこと? えっ、憑いてる??憑いてるの???』
気は感じるようになったものの、実際に可視化されたものはなにもなかった。
ましてやそっち系の世界は本当にニガテだ。
それでもピンクちゃんが新しい能力を身につけた報告自体に興味が湧いてしまい、私は肩が痛かったり身体が重くなった経験はこれまでになかったし、気功もやってるから絶対自分には憑いていない自信もあった。だから面白半分で聞いてみたんだ。
『うーん・・・、いや、だいじょうぶよ!憑いてるっちゃ憑いてるけど、別に悪くない。全然悪さしないというか、喜怒哀楽が豊かでね、きりんと一緒に感情移入しちゃう感じ!』
ちょっと待て。
憑いてるんかい。
生まれて初めて言われたわ。
だいじょうぶって言われてもそれを聞いたワタシは全然大丈夫じゃないわ。聞かなきゃよかった。失敗したわ。
憑いててもだいじょうぶ、悪さしないよ!って、なんやねん。
笑顔で言われても「そっか、ならよかったぁ!(ニコっ)」ってならんわ。
地獄先生ぬ〜べ〜で見た、おとなしめの霊が自分の肩に憑いてるのを想像してみる。
なんかの拍子に発狂とかしないんか。
お祓い行くほどじゃないって言われても、なんかちょっとイヤだわ。
それを聞いただけで、なんか急に肩が重くなった気がした。
それはさておき、会場に着いてからも、ピンクちゃんの見ちゃった話を延々と聞いていた。
内容は結構ホラーでヘビーな内容なので割愛させていただきますが、それに免疫がない人だとかなり聞くのがつらい。ただ、とんでもなく明るいピンクちゃんが話すから、なんだかホラー話も不思議とポップに聞こえる。音楽ヤローで暑く盛り上がった会場とピンクちゃんの実体験ホラー話のアシンメトリーさが、なんとも言えないブランニューエンターテインメント。
話を聞いていると、どうやらピンクちゃんは、サンバサンバに行きまくっているらしい。
家族ぐるみで通っているらしく、そしてそこの常連さんとも仲良くなり始め、お店を紹介した私が逆にお店の近況を聞いていた。
そこに行くと、デトックスされていろんなものが目に見えるものから見えないものまで身体から出て行くらしい。一方、私はというと、気功を始めてから足が遠のいていた。ダブルで通う必要がないと感じたからだ。
この時、ピンクちゃんは前世の話もしていたが、前世の話だけはどうしても抵抗があったので、軽く聞き流していた。そしてピンクちゃんがそっちの道に進んで開業したらとかっていう話にまで展開していた。
ライブ会場がいくつかに分かれており、音楽を聴くよりピンクちゃんとの話に夢中になった私たちは、休憩も兼ねて飲食スペースに腰掛けながらお酒を片手に生ライブの会場から漏れたBGMをバックに、引き続き愛とホラーと気と笑い話をアットランダムに繰り広げていた。
すると、飲食スペースにある小さなステージにある人物が登壇してきた。
元お笑い芸人のDJが決まった時間にイベントをやるらしく、マイクパフォーマンスを始めた瞬間、一気に人集りができ、私たちが座っていたベンチは人で囲まれてしまった。
スピーカーのウーハーが波打ち、重低音がお腹に響く。軽快な音楽に合わせて、周りのみんながDJに合わせて激しく踊り始めた。
その時。
私の右肩が鈍痛に襲われた。
イタイ。なんだこれ。
ステージ側に半身をひねってみていただけなのに、
姿勢が辛いわけでもなく、体勢を変えても痛みは取れなかった。
ピンクちゃんも音楽にノっている様子はなく、同じくステージをただ見つめていた。
20分程度でショーは終わり、直様人が捌けていった。
やっと会話が聞こえる程度に静まった時、二人同時に
『肩が痛い。』と言った。
なんとピンクちゃんも痛かったのだ。
ピンクちゃんは続けてこう言った。
『きりんの斜め後ろにいた男の人に、すごいの憑いてた。』
まじですか。
おばけついてる人がいるだけで、肩が痛いって。
今までこんなセンサー私にはついてなかった。次の日の朝には消えていたが、ピンクちゃんはその痛みと3日も付き合ったらしい。
私は、それを怖いという気持ちではなく、面白いという感覚でしかなかった。
気を感じ始めてから、身体がどんどん変化してきている。
でも、この時はまだ、新しい感覚を楽しめる余裕があったんだ。
順調に、第3の目は少しずつ、加速度的に開いてきている。
覚醒まで、あと22日。