2014年12月24日(水)ガジュマルさんが家に来た日
ピンクちゃんはこの日も、
植物について熱く語っていた。
私にはピンクちゃんというお友達がいる。
彼女は会社の元同期で、私より5つ年上。
目鼻立ちがはっきりとした美人さんで、清潔感もあり、スカートがよく似合う。
身の回り品は全てピンク色。それが嫌味にならないから、ちょっとだけ羨ましい。
とんでもなくご機嫌な人で、人の悩みも笑いで吹っ飛ばしてくれる軽快さが、
いつもオフィスを明るくしてくれた。
たまに、誰もいないトイレに『いま中に女の人がいた』とか心の内に秘めとけばいいことを、これから使うであろう女子たちにしっかり情報共有してくれるチャーミングなところもある。
生意気な私とたまに遊んでくれた。
そんなピンクちゃんは、誰かが話を振ったのか、
植物について話し出してからずっと止まらない。
すべての植物を「ちゃん」付けにし、自分の愛犬の写真を、こちらからお願いしなくても見せてくる人くらいの愛情の注ぎようだった。次々と出てくる植物の名前が全然聞き取れず、みんな◯△$♪×¥●&%#ちゃんだった。
そんなご機嫌な彼女に、植物の良さを1年以上刷り込まれると
人はやはりそれが欲しくなってくる。
そんなにいいのか、植物。
私の目も、植物のことを考えるだけであんなにも輝くようになるのか。
その日、サボテンすら枯らす私にも育てられる植物はないか?と、自宅で深夜一人、ヤクルト片手にネットで探す。
いくつか良さげなものを見つけながらも、1点ものを扱うECサイトに行き着き、ざっと下まで目を通す。NEW ARRIVALのバナーのすぐ下左端。
そこには何か他の植物とは明らかに違う、1本の木。
センガクガジュマル。お値段、ナント30,000円。
買うつもりもない、しょっぱなから30,000円はないでしょう。
盆栽に近い外観と、枝から土にランダムに伸びる複数の蔦。
それが醸し出す重厚感と渋みは、もはや観葉植物歴10年くらいの上級者が価値を見出しそうな代物だった。
でも、なぜかわからない。
どうしても、どーーーーーーしても何度見ても、これを買わなきゃいけない気がする。
この異様な空気感というか、写真なので空気もなにもないのだけれど
なにか見えないものが私になにか訴えかけてくる。
『お客様、お買い物は出会いですよ。』
結局、百貨店の催事コーナーにいる、やり手の女性店員に背中を押された気分でその日のうちにポチった。
1週間後の今日、ついにそれが届いた。
過保護というくらいに、大切に、しかし無駄なく梱包されたガジュマルが出てきた。
一見ただの木。高さは120センチくらい。
幅は抱きかかえられないほど四方八方に枝を伸ばしている。
デカい・・・。
葉の緑は濃く、光沢があって美しい。
とりあえず寝室に置いてみた。
その日の夜。
床につくと、その重厚感は気配に変わった。
なにか、誰かがそこにいるような気配が、部屋の隅・・・
ガジュマル付近から発せられている。
それはもう人かと思うほどの存在感で、じっと見つめられているよう。
眠れない・・・。
なんだろう、目に見えやしないが、やっぱりこの木
なにか変。